平松雄二の 株と為替に勝つ!
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2009年09月09日

資産運用の実際(その2)


1-2.トップ・ダウン・アプローチ


トップ・ダウン式の運用手法は、前回説明した、石を一つ一つ積み重ねて、
石垣を作るような、ボトム・アップ式の運用手法とは違い、
全体を俯瞰して、大まかな資産運用の枠組みを作る手法で、
航空写真や地図作りをイメージしていただければ分かりやすいと思います。

具体的に、債券運用の場合で、説明します。

債券運用では、金利動向の把握が重要です。

本題に入る前に、債券の特徴を理解していただくための説明をします。

<景気と金利>

景気が良い場合(GDP成長率が大きい時期)では、
企業は、販売が好調になるので、生産量を増加させます。

従業員の残業時間が伸びます。
雇用を増やそうと動きます。

中には、新しく生産ラインを増設したり、工場を建設したりします。
また、強気に在庫を増やそうとします。

上記のような企業行動は、全て自己資金で賄えないので、
企業は銀行借入を増やそうとします。

社債を発行して、資金調達する企業もあります。
上場企業の中には、新規に株式を発行して、資金調達しようとするところも出ます。

「金利はお金と言うモノについている価格である」と、考えると分かりやすいです。

資金調達しようとすることは、お金が必要だと言うことです。
お金と言うモノに対する需要が大きいと言うことです。
お金の需要が、お金の供給よりも大きい場合、お金の価格は上昇します。

つまり、金利は上昇します。

価格を上げると、需要が減ります。

景気が過熱してくると、日本銀行等の中央銀行は、お金の価格である、
金利を上げます。

これを政策金利の上昇、または、金融引き締めと言います。
金利が上昇すると、需要が減少します。

金利が上がることにより、景気過熱が冷まされることになります。

<金利と債券価格>

債券の特徴は、金利が上昇すれば、債券価格が下落します。
逆に、金利が下がれば、価格は上がります。

分かりやすいように、例をあげます。

A社が償還年数(満期)3年の社債(利付債)を、
表面利率5%(1年に5%の利息を支払う約束、クーポン金利5%とも言う)で、
価格100円で発行したと仮定します。

1週間後、A社と規模や信用力が同じようなB社も、資金調達のため、
債券を発行することになりました。
B社の社債の条件は、償還期間3年、クーポン金利6%で価格100円としました。

さて、A社とB社の債券価格はどうなるでしょうか。

A社とB社は、規模や信用力は同じです。
満期も3年と同じです。
違うのは表面金利だけです。

6%のモノが100円であれば、5
%のモノに100円を出す投資家はいません。
A社の社債価格は100円よりも安くなります。
つまり、金利が上昇すれば、債券の価格は下落します。

償還年数と債券価格>

A社の社債が、甲・乙の2種類存在していると仮定します。

一つは、7年前に発行された償還年数10年、表面金利5%、
発行時の価格が100円の社債甲だとします。
現在は、社債甲の残存年数は3年になっています。

もう一つは、2ヶ月前に発行された償還期間10年、表面金利5%、
発行時の価格が100円の社債乙だとします。

現在は、社債乙の残存年数は9年10ヶ月で、おおまかに約10年です。

社債乙が発行されて以降、景気拡大で、金利が1%上昇しました。

現在の金利は6%です。
今後も経済成長が見込まれ、金利が低下する見通しはないものとします。

現在、現金を保有している投資家は、6%で運用できる機会があります。

しかし、社債甲の保有者は、向こう3年間5%の金利しか得られません。
社債乙の保有者の場合は、約10年間も5%の金利で我慢しなくてはいけません。

見方を変えると、社債甲の保有者の場合、社債甲を売らずに保有し続ければ、
3年過ぎればより有利な投資機会を得る機会があります。

しかし、社債乙の保有者の場合、社債乙を保有し続ければ、
10年待たなくては、より有利な投資機会は訪れません。


社債甲・乙の表面金利は5%ですから、現在の6%の金利では、不人気です。

金利が6%と言うことは、表面金利6%の社債が100円で購入可能と
言うことですから、社債甲・乙の価格は、不人気のため、
発行時の100円よりは安いはずです。

不利の度合いを考えると、社債乙の方が、
より有利な投資機会をより長期間逃すため、社債甲より不利です。

つまり、社債乙の方が社債甲より人気がなく、価格が安くなっているはずです。
言い換えると、金利が1
%上昇する場合、長期債(社債乙)の方が、
短期債(社債甲)よりも、価格下落が大きいのです。

<債券の特徴まとめ>

金利上昇=債券価格下落
金利低下=債券価格上昇

金利上昇=債券価格下落(下落幅=長期債>短期債)
金利下落=債券価格上昇(上昇幅=長期債>短期債)

以上のように、債券には数々の特徴があります。

今回は債券の特徴の一部を説明したに過ぎません。
さらに詳しい説明は、後日にする予定です。

<シナリオ作成>

まず、マクロ経済の予測をして、経済動向や金利動向のシナリオを作ります。
GDP成長率、インフレ率、財政政策、金融政策、海外主要国(とくに米国)の
GDP成長率やインフレ率、そして為替動向等を予想します。

前回ボトム・アップ・アプローチで説明したように、機関投資家の場合は、
各役割を担当する人員が豊富ですが、個人投資家は全て、一人で行います。

そこで、経済研究所・証券会社・銀行・運用会社等々のレポートが、
大いに役立ちます。

当然、景気や金利変動の予想は、各社で当たり外れがあります。
当たれば善し、外れれば悪し、だけではありません。

各社のシナリオには、結論が導かれるための背景が存在します。
基礎的な部分の、どこにスポット・ライトを当てて、理論展開しているのかを、
十分吟味する必要があります。

ボトム・アップ式の運用手法と同様、トップ・ダウン式の運用手法でも、
ころころと参考資料を変更してはいけません。

事前に、勉強して研究して、どこのレポートを参考にして、
マクロ経済予測や金利予測をするのかを決めます。

いったん、採用したレポートは継続して使用します。

<具体的な債券運用におけるトップ・ダウン・アプローチ>

債券ポートフォリオ(資産の組み合わせのこと、この場合は、
債券の組み合わせ)を構築するときに、金利動向をどのように考えるかが、
最重要なことの一つです。

ここまで説明したように、金利の上下で債券価格が大きく変動するからです。

金利上昇シナリオの場合、長期債のみを保有するポートフォリオでは、
保有債券価格が下落します。

金利上昇幅が大きい場合、
表面金利であるクーポン金利から得られる収益よりも、
債券価格の下落でこうむる損失の方が、大きい場合もあります。

つまり、資産が目減りする可能性があります。

そこで、損失を小さくするためには、金利上昇シナリオの場合、
より短めの債券を保有するようにします。

これを債券ポートフォリオの短期化とも言います。

当然、価格が大きく下落すると想定される局面では、
損失を回避するために、保有債券を売却したり、
債券先物を売建てしたりして、
値下がり損を小さくするための投資行動も起こすケースもあります。

金利低下シナリオの場合は、
逆に保有債券の償還年数をより長期のものにする方が、
期待収益が大きくなります。

これを債券ポートフォリオの長期化と言います。

既に保有債券がある場合、
既存債券ポートフォリオ表面金利償還年数から、

シナリオに基づくポートフォリオの期待収益が計算されます。

この収益を極大にするために、償還年数の長短等を調節し、
投資行動を起こします。

外国債券を保有している場合、為替シナリオも加味して、計算します。

保有債券がなく、新規投資を開始する場合、
期間中どの時期にどのような債券(表面金利償還年数等)を購入するのが、
シナリオに基づく期待収益が極大になるかを計算し、
実際の投資行動を起こします。


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