平松雄二の 株と為替に勝つ!
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2009年10月21日

資産運用の実際(その4)


3-1.シナリオとは何か


株価でも、債券価格でも、ドル円等の通貨交換価格(為替)でも、
すべての価格は、需要と供給の交わるところ、
つまり、買いたい人と売りたい人が、
納得して織りあった価格で、決まります。

資産クラスを売買する人々の、それぞれの売買動機や理由は
千差万別ですが、彼らが置かれた所与の条件は同じです。

言い換えれば、すべての市場参加者にとって、
所与の条件であるマクロ経済は唯一無二です。

ただし、各投資家が、考える、または感じる、
マクロ経済の現状認識や将来予測は、それぞれ異なります。

基本的に、どのような相場水準でも、売買は成立します。

相場が高いときでも、まだ上昇すると考える人は、買います。

逆に、十分上がったので、
もう上がらず下げるのではないかと考える人は、売ります。

相場が安いときでも同様です。

それぞれの投資家の、
売買の動機付けや理由付けの基礎になるが、シナリオです。

シナリオとは、将来のある時点までの、
マクロ経済の基礎的条件を精査し予測することです。

また、予測したマクロ経済を、言い換えればGDP成長率等を基に、
金利動向・株価動向・為替動向を、客観的に予測する作業です。

株や為替の短期売買をするとき、
投資家は、チャート分析やテクニカル分析を駆使して、
短期間の相場について、頭の中にシナリオを描きながら、
売買することがあります。

この場合のシナリオも、上記の長期シナリオとは、
少し性格が違いますが、立派なシナリオです。


3-2.シナリオの重要性


株や為替取引では、チャートやテクニカル分析によって、
売買タイミングや価格を、決めることがあります。

しかし、マクロ経済の経済指標を分析するときは、
そのような分析方法は使いません。

たとえば、「米国の失業率は、しばらく三角保ち合いでしたが、
ようやく上に放れた」とは言いません。

ただし、「失業者数は3ヶ月移動平均を下回ったので、
改善の兆しがある」とは言います。

この場合の、3ヶ月移動平均は、現在値との比較するために、
過去の動きの中で異常値等を排除するために平均したものであり、
いわゆるテクニカル分析ではありません。

マクロ経済の現状認識や将来予測は、判断作業です。

シナリオ作成は、機械的な作業ではなく、
とても人間的な判断作業です。

冷たい経済指標や経済学の公式に、
暖かい人間の血を流し込む、人間臭い作業です。

元になる経済指標等の数字は、
全ての人が知り得る共通のものです。

まったく同じ数字を基礎に、それぞれの考えを導く判断が、
結果として、大きく異なります。

同じ経済指標でも、景気が良いと判断し、
その結果、株価が上がるとシナリオを描く人がいれば、
反対に、景気はそれほど良くないので、
株価は下げるとシナリオを描く人もいます。

経済動向・金利動向・株価動向・為替動向、
同じ数字から異なったシナリオができます。

そこが、シナリオ作成の興味深いところでもあり、大切なところです。

できあがったシナリオは重要ですが、同じくらい重要なものは、
シナリオを導くための考え方やプロセスです。

前回までの、運用手法でも説明しましたが、
頑固に同じプロセスを使い続けることが重要なのです。

当然のことですが、シナリオを間違うと、運用成果に大きな差が生じます。

しかし、確固たる考え方で、作成されたシナリオが、
実際とは狂ってしまっても、投資家として、悔しい思いはあっても、
納得できる失敗になるはずです。

大切なことは、失敗しても、同じ失敗を繰り返さないようにしなくてはいけません。


3-3.シナリオ作成



前回、分散投資の重要性を説明しましたが、
シナリオ作成でも、同じように、分散することが大切だと思います。

シナリオ作成は人間的な判断作業ですから、
結果的に間違うことは当然あります。

経済を見る目、社会を見る目も、
複眼的に複線的に見るべきだと考えます。

卓越した眼力の持ち主は、唯一のシナリオで十分です。
分散投資をする必要もありません。

しかし、筆者を含め平凡な人間は、
シナリオを複数作成すべきだと思います。

それでは、作成するシナリオはいくつ作ればよいのでしょうか。

人間の頭では、将来おこるすべての事柄を想定することは不可能です。
大体、確率的に3分の2から9割程度発生する、
将来のシナリオが描ければ十分ではないでしょうか。

つまり、1標準偏差から2標準偏差程度です。

難しいことはさておき、シナリオは3通り作成します。

1番目のシナリオを英語で、「モースト・ライクリー・シナリオ」と呼びます。
日本語では「最大確率シナリオ」とでも呼べば良いでしょうか。
自分で考える中で、将来にもっとも当てはまる可能性が高いシナリオです。

2番目は「ライクリー・シナリオ」です。
そこそこの確率で、「あり得るシナリオ」です。

最後に、「レス・ライクリー・シナリオ」です。
「あまりおこり得ないシナリオ」ですが、
可能性として排除できないシナリオです。

読者の方は、お分かりだと思いますが、
第1のシナリオが上昇シナリオ、
第2のシナリオが横ばいシナリオ、
最後のシナリオが下落シナリオではありませんので、
老婆心ながら、ご注意ください。


自分で、冷静に考えて、可能性として、
または発生する確率がもっとも高いシナリオを、
「モースト・ライクリー・シナリオ」とします。

たとえば、昨年末にシナリオを作成すれば、
リーマン・ショック後で、金融市場や資産市場は大荒れでしたので、
「経済成長はマイナス、金利は低下、株価は下落」と言うシナリオが、
「モースト・ライクリー・シナリオ」だったと思われます。

方法論として異論があるかも知れませんが、筆者は次のやり方をとっています。

3通りのシナリオを作成します。

それぞれのシナリオに確率を付与します。
大まかに、確率は60%、30%、10%程度にします。

当然、確率の合計は100%です。

経済成長率、インフレ率、金利、株価、為替等を予測して、
各シナリオに上記確率を掛け算します。

その後、3通りのシナリオの総和を求めます。

そうすることにより、自分で考え得る、
そこそこすべての一定期間の将来をカバーできる1つのシナリオができます。

そのシナリオに合わせて、新規にアセット・アロケーションをしたり、
既存のポートフォリオに変更を加えたりします。

また、シナリオが3通りあれば、将来の相場展開の中で、
いろいろな対処方法がとれると考えます。


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