平松雄二の 株と為替に勝つ!
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2009年10月28日

赤字国債増発の杞憂


パラダイム・シフト

国民が民主党を選択して2ヶ月が経ちました。

自民党の小泉政権時代に、市場原理主義的な政策により、
数々の改革が実行されました。

それらの改革が、まるで逆戻りをしているような、
変更が加えられようとしています。

小泉改革が「是」で、民主党や亀井大臣の政策や言動が
「非」とは思いません。

単純に、振り子が大きく振れて、
民から官へと大きく舵が取られているだけです。

政治とくに税制は、分電盤の役目を果たします。

個人や法人から税金を集め、効率的に分配します。
分配の仕方は時代により変化します。

自民党時代は、法人税を下げ企業の国際競争力を上げ、
企業活動を支援することにより、国全体の経済活性化を図ろうとしました。

また、個人の所得税率も下げ、より大きな所得に対してインセンティブを与え、
高所得者の消費を刺激することで、経済活性化を考えました。

民主党の政策は、どうやらアダム・スミスの「見えざる手」を
信用していないようです。

市場原理主義への反省です。

企業活動の種々のハードルを下げることで、国民経済を成長させるための
「最適な解」が得られるとは、民主党は考えていません。


<米国の社会主義化>

海の向こうのオバマ政権も同じ状況です。

緊急経済対策により、自動車買い替え補助金、
初回住宅購入者への税控除、失業保険支給の期間延長と増額、
医療保険制度拡充等々、社会主義的な政策と大きな政府を地で行っています。

保守派は苦々しく思っているはずです。

自らを「戦争大統領」と呼んだ、ブッシュ政権に対するアンチ・テーゼです。

米軍とイラク及びアフガンとの戦争は、
ベトナム戦争同様に戦績はよろしくありません。

イラクのフセイン一派を抹殺したくらいの戦果です。
ずいぶん無駄遣いをしているように感じます。


<新たなバブルとドル>

ベトナム戦争終了とオイル・ショックが重なり、米国は長いトンネルに入りました。

今回は、イラク・アフガン戦争と未曾有の金融危機が重なり、
米国は再び長いトンネルに入ると思いますが、ジャブジャブの資金放出で、
バブルを膨らますことにより、痛みを和らげるつもりのようです。

米国金融機関に隠蔽されている不良資産、商業用不動産、住宅差押え、
クレジット・カード等のデフォルト等々、すべてを覆い隠すために、
過剰流動性により、リスク資産価格を上げさせる必要性があるのでしょう。

これは米国民が望んでいる姿だと思います。

基軸通貨として米国とドルは、「米国債」と言う人質をしっかり捕っています。
ドルは暴落しそうで暴落しない「からくり」になっています。

オバマ政権の掲げる、グリーン・ニューディール政策では、
原油価格が下落すると、厄介な状況に陥ります。
高コストの再生可能なクリーン・エネルギーへ転換の動機付けが萎みます。

ドルが下落すれば、原油価格は上昇し、
クリーン・エネルギーには好都合です。

米国が貯蓄率を上げることは、消費を抑制することであり、
同時に輸入を減らすことです。

世界の不均衡をなくすことは、中国や日本が輸入を増加させ、
米国が輸出を増加させることです。

交易条件から、ドル安である必要性があります。

米国の輸入が減少するのであれば、
ドル安による輸入物価上昇は限定的になります。
輸入インフレは防げます。
原油価格高騰は容認できます。

米国が目指すのは、ドルのフリー・フォールがない程度のドル安です。
相場は上下しますから、一時期ドル高に振れることもあるでしょう。


<筋が通った民主党政策>

翻って日本の置かれた状況は、円は基軸通貨ではありません。
日本国債の外人投資家の保有比率は無視できる程度です。

株式市場は外人投資家が席巻していますが、国債はローカル市場です。

幸い貯蓄率の高さと個人金融資産の大きさで、
十分に国債が消化されています。
海外資金は不要です。

子供手当てや高校実質無料化は、
これまでは企業や組織に配分されていた資金を、
直接家計に配分する政策です。
農業分野の戸別所得補償も同じ発想です。

これらの政策の成否は、やってみないと分かりません。

高速道路無料化やガソリンの暫定税率廃止は、
二酸化炭素削減とどうやって整合性を持たせるのでしょうか。

今後が見ものです。

優秀な政治家や官僚が、知恵を出して削減しようとしても、
予算規模は大きくなります。
歳入は不足します。

赤字国債を増発するしか方法はありません。

消費税を含め、増税はタブーです。

個人投資家が国債を購入しなくとも、貸し渋りをする民間金融機関が
個人投資家の代わりに、国債を購入し続けます。
民間金融機関には、国債しか運用手段はないのです。

しかし、政治が貸し渋り対策を民間金融機関に強要し、
民間金融機関は貸倒引当金増大等で国債購入の余裕が小さくなります。

これも心配無用です。

民から官へ衣替えする郵貯銀行と簡易保険が、国債を購入します。

この点、民主党政権の政策は筋が通っています。


FRBとの競争>

最後は、日本銀行です。

財政赤字を埋めるための国債発行、日本銀行の国債引受、
結果として紙幣増刷。

同じことを大胆に行っている米国のFRBには負けられません。
日銀券をプリントし続ければ良いだけです。

幸い日本はデフレですから、紙幣が多く刷られても、大丈夫です。
内需が盛り上げれば、ハッピーですが、市中にお金を流しても、
直ぐに金融機関に戻ってしまいます。

当面インフレにはなりません。


デフレと高齢化>

子供手当て等で出生率が向上するかどうか分かりません。

出生率が上昇しない限り、確実に高齢化は進みます。
年金制度に変更が加えられない限り、デフレは年金受給者には好都合です。

収入は一定です。
年金額は物価連動ですが、
下方硬直性があります。
支出はデフレで減少します。

結果として、可処分所得が増加します。

デフレの状況でなければ、通常は人口の高齢化は
貯蓄率の低下を意味しますが、これからの日本ではどうなるでしょうか。

これまでは、経済でも政治でも、欧米にはお手本がありましたが、
未曾有の高齢化は、日本が世界の試金石となります。


年金受給者や高齢者が受入れる政策を掲げる政党が政権を握ります。
選挙は高齢者の方が圧倒的に投票行動をおこすからです。

若年層もきちんと投票しなくてはならないのに…。

海外から遮断されている国債市場は、外人動向や為替は無関係です。
個人金融資産が存在する限り、貯蓄率が維持される限り、
赤字国債は増発可能です。

クラウディング・アウトを心配することはありません。


<G2と民主党政策>

米中のG2G決められた、米国の貯蓄率上昇と中国の内需盛り上げで、
日本の対米輸出は困難です。

中国やアジア諸国への輸出攻勢は考えられます。

しかし、二酸化炭素を削減するために、
製造業は国外に生産拠点を移す方向でしょうから、

国内設備投資に関係する資金需要は盛り上がりません。

よって、国債増発による金利上昇は限定的です。
この点でも、民主党の政策は筋が通っているように見えます。

脱官僚や天下り撤廃のスローガンを掲げて、
国民の溜飲を下げさせおいて、資金配分の効率化の役目を、
民から官へと導く新しい政治手法です。

結論は直ぐには出ません。

外人投資家が日本株から撤退することは考えにくいです。
日米ともに社会主義的な政策のオンパレードですから。
世界が、時代が変わったと言うことでしょうか。

パラダイム・シフトです。


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