平松雄二の 株と為替に勝つ!
ホーム>過去のメルマガ
過去のメルマガ
2009年
2010年
チャートの小部屋
用語集
欧州信用危機小年表

2009年12月23日

個人金融資産と財政赤字


<当面は懸念なし>

10月28日の配信で、「赤字国債増発の杞憂」を書きました。
民主党政権になり、景気悪化継続に伴う税収減と
各種政策で赤字国債増発が必至です。

新規国債発行に伴う受給悪化懸念で金利が上昇しても、
一時的なことだと思います。

当面の間、赤字国債は日本国内で消化可能だと考えるからです。

その理由は:

1)円は基軸通貨ではなく、
 外国人の日本国債保有は無視できる範囲であるから
2)個人金融資産残高は、財政赤字額よりは今のところ大きいから
3)年金制度が不変でデフレ状態が続くと、
 貯蓄率が維持される可能性が高いから
4)銀行や完全民営化されない郵貯銀行とかんぽ生命で国債を購入するから

金利が国債の受給により一時的に上昇しても、
マクロ経済の状態が、金利レベルを事後的に決定してしまいます。

たとえヘッジファンドが、先物市場で国債を大量に売っても、
マクロ経済の大きな流れには逆らうことは無理です。

<最新の個人金融資産残高動向>

先週日本銀行から発表された、
資金循環統計(2009年第3四半期速報)を見ると、
赤字国債の消化にはまだ余裕はあるものの、
そんなにゆっくりできないと感じます。

参考のためURLは:

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/sj/sjexp.pdf

2009年9月時点で、個人金融資産残高は1439兆円です。

1439兆円のうち、747兆円の預金と、394兆円の保険・年金準備金で、
既に個人は間接的に大量の国債を保有しています。

ちなみに、個人の国債保有比率は4.3%なので、
820兆円×4.3%=約35兆円の国債は、
既に個人が直接的に保有していることになります。

<企業の資金需要減少と金融機関の資産運用ニーズ>

現下の経済状況では、企業と金融機関の双方に
国債に対する需要を大きくする要因があります。

低成長とデフレ状況が続くと、企業の資金需要は減少します。

その理由は:

1)モノが売れないので、生産ラインを新規で作ったり、
 既存ラインを増強したりしません。
 設備投資のための資金需要は減少します。

2)モノが売れないので、仕入れ額を減少させます。
 運転資金需要は減少します。

3)幸運にも、同じ数量売れるとしても、
 デフレや円高の影響で原材料価格も低下しますので、
 仕入れ額も減少します。
 やはり、運転資金借入れニーズは低下します。

金融機関が国債を購入する理由は:

1)上記のように金融機関の企業貸出しは減少します。
 目減りする貸出し分だけ、金融機関は利子を生む資産として
 国債を購入します。
 金融機関の負債である預金残高が減少しないので、
 バランス上国債を購入せざるを得ないのです(後述)。

2)景気悪化で企業倒産リスクが大きくなります。
 反対に国債には資金回収リスクはないので、金融機関は資産として、
 企業貸出しより国債を選好する傾向が強くなります。

3)金融機関の資金調達コストである金利はゼロ付近です。
 長期国債の利回りは現状1.2%以上あります。
 金利差が1%以上あるため、資金運用として
 長期国債を購入する動機になります。

<家計の要因>

企業と金融機関の双方の要因で、
国債の需要が大きくなることは判明しました。

それでは、家計の要因はどうでしょうか。

企業の生産活動低下や減益で、雇用が削減されたり、
残業代が減ったり、給料やボーナスが減少します。


個人所得が減少するので、
家計には借入れを圧縮返済する圧力がかかります。

例えば、ローンを使っての住宅購入を諦めたり、
車の購入を先延ばししたりします。

その上、既に借入れをしているローンの
期限前返済しようとすることもあります。

このような家計行動は、金融機関にとっては
国債の購入増加要因となります。

<銀行のバランス・シート

企業や個人の借入れは負債ですが、
金融機関にとっては資産です。

金融機関にとっての預金は負債ですが、
企業や個人にとっては資産です。

企業や個人の借入れが減少して、
預金も同じだけ減少するのであれば、
金融機関は資産として国債を購入する必要はありませんが、
実際には預金は減少していないのです。

金融機関にとって、負債(預金)が減らない状態で
資産(貸出し)が減少するので、

収益を生む資産を持たなくては、苦しいばかりです。

積極的にも消極的にも国債を買い増すしか方法はないのです。

資金循環統計(2009年第3四半期速報)の3ページ目、
(図表3-1)家計の金融資産の「A前年比、構成比」を見ても分かるように、
「現金・預金」は常に安定的に増加しています。

個人金融資産の50%以上は預金です。
増減するのは「証券・出資金」です。


<投資から貯蓄へ=デフレ下の実質金利>

「貯蓄から投資へ」は既に過去のスローガンになっています。

株式市場の低迷や、為替市場の乱高下で、
確実な銀行預金を選ぶ動機が強くなっています。

日本が資本主義世界の中で今後とも頑張って行くためには、
「貯蓄から投資へ」と導かなくてはならないのに、とても残念です。

現在の日本の名目金利はとても低いです。
預金金利は0.1%以下ですし、10年の国債利回りもせいぜい1.2%です。
海外の金利と比較すると、金利はないに等しいです。

ゼロ金利の預金を選好する理由付けの一つとして、
実質金利の考え方があります。

計算の仕方は、実質金利=名目金利−インフレ率です。
金利もインフレ率も年率で計算します。

10月のCPIは、前年同月比-2.5%です。

根底的な物価変動を知るために、生鮮食料品やエネルギー価格を除く
CPIを使うことが多いです。
食品価格やエネルギー価格は変動が激しいので、
短期的な変動を避けるためです。

しかし、実生活での物価変動は総合指数で十分だと思いますので、
ここでは-2.5%を使います。

銀行預金を0.1%とすると、
実施金利=0.1%-(-2.5%)=2.6%と計算されます。
私たちは、金利がゼロでも、
2.5%の価値があると直感的に感じているので、預金します。

これが、デフレの怖いところです。
資産を購入するよりは現金や預金の価値が高いと感じているのです。

株式に投資しても、市場下落により投資元本割れをしてしまいます。

預金は金利がほとんどなくても、
元本が保証されています(1000万円まで)。

5%の名目金利を求めて、外貨預金や外国債券を購入しても、
円高により投資元本が回収できないことが多いです。

結果的に金利の5%以上の損失を出すこともよくあります。

購入する資産が上昇して収益を上げれば良いのですが、
現実的には収益を上げてくれません。
バブルが崩壊して以降、ずっとそのような状態が継続しています。

「貯蓄から投資へ」と「笛吹けど、踊らず」です。

<ユーロに加入できない日本>

日本の国と地方の長期債務残高は825兆円です。

資金循環統計(2009年第3四半期速報)の8ページ目、
(図表5-2)国債等の保有者内訳、「A前年比、構成比」で、
国債残高の820兆円とほぼ同じ額と言えます。

ユーロ加入の条件の
マーストリヒト条約では、
財政赤字がGDPの60%以下でした。

現在の日本のそれは170%です。

このところ、ギリシャの財政問題が顕著になりました。
近いうちにアイルランドも懸念材料になるだろうと思います。

しかし、日本がユーロ圏に存在して、ユーロに加入したくても、
加入できないのが実情です。


<国債購入余力は…>

話を本題に戻します。

リスクを取らない個人金融資産の預金残高は減少しません。

デフレに伴い支出が減り、
年金受給者の実質可処分所得は増加します。

月々20万円の年金を貰っている人が、
月々20万円の生活をしていたとします。

物価が下落して、月々19.5円の支出で同じ生活水準がキープできます。
将来不安のため、5000円は使わずに預金します。
結果として、貯蓄率は維持されます。

金融機関は国債購入余力を維持できます。

1439兆円の個人金融資産残高の大部分は
60歳以上の世代に保有されています。

住宅ローンや教育ローン等の借入れは、若い世代が保有しています。
このように、金融資産は偏在しているのです。

国と地方の長期債務825兆円は、1439兆円の個人金融資産残高で、
直接的に間接的に既に保有されていまが、まだ余裕があります。

乱暴に言えば、

1439兆円−825兆円=614兆円までは何とかなります。

国と地方で毎年50〜60兆円の赤字を垂れ流しても、
割り算して単純に10年程度の余裕があります。

しかし、忘れてはいけないものに、金利負担があります。
国債金利です。

825兆円の利払いが、年1.5%とすると、
それだけで年間12兆円あまり必要になります。
10年間では123兆円にも膨れます。

景気を浮揚させるために、
財政赤字を拡大させ国債を発行する理由は納得します。

しかし、今後は利払い費用がますます大きくなります。
上述のように、乱暴な引き算と割り算で単純に10年の余裕でしたが、

実際に余裕は数年しかないと考えられます。
本当は大変なのです。

<そして誰もいなくなった…>

個人金融資産を使い切ったら、その後、
誰が日本国債を購入しますか。

外国人投資家が購入してくれると良いですが…。
為替市場で円高が未来永劫継続するとは思えません。

低金利は投資魅力に欠けると思います。
資金を惹きつけるために金利が上げれば、
利払い費用が膨大になります。

財政赤字削減の正念場です。

現在は、リーマンショック後の緊急避難的な財政出動です。

「景気が先か、それとも財政再建が先か」を
そろそろ考えなくてはならない時期だと思います。

35兆円に上ると言われる「需給ギャップ」があるため、
経済対策が効きにくくなっています。

次回はこの問題について書いてみます。

                    ページ・トップへ     ホームへ