平松雄二の 株と為替に勝つ!
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2010年10月12日


今後のシナリオ作りのために


米国経済の真の姿を把握するために、毎日発表される
経済指標を丹念にチェックすることは大切です。

しかし、米国の国土は広大なうえ、人口は3億人を超す
超大国ですから、全体像を把握するのは困難です。

雇用統計のNFP(非農業部門雇用者数)や失業率は、
サンプル調査の結果、集計された元データに、
統計手法を駆使して、季節調整を加え、
経済指標として発表しています。

他の殆どの経済指標も同じようなサンプル調査です。

実際に、経済指標にはいろいろな種類があり、
全ての指標が同じ方向を示しているわけでもなく、
米国経済の進んでいる方向は、大まかにしか分かりません。

膨大な情報が集中するオバマ大統領でも、
バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長でも、
米国経済の全容を完璧に把握することはできないと思います。

そのバーナンキ議長が、8月下旬の議会証言で、
「必要があれば追加緩和をする準備がある」
と発言して以降、世界中の相場の方向が変わりました。

米国経済は、追加量的緩和をしなければいけないほど
疲弊しているのでしょうか。

少なくとも夏以降の米国経済は、緩慢なスピードではあっても、
成長していて、マイナスには陥っていません。

今後のシナリオ作りのために、リーマン・ショック以降の
流れを大まかに見てみます。


1)大不況の原因

今回の大不況の最大の原因は、住宅価格下落による
住宅バブルの崩壊です。

住宅価格が下落し、住宅ローンの焦げ付きが大量に発生し、
リセッションが始まりました。

サブプライム・ローンや金融工学の発展や不正な
金融取引等々の原因もありますが、なんと言っても、
住宅価格の下落が最大の原因です。


2)住宅バブル崩壊の結果

住宅ローン焦げ付きの大量発生で、個人が抱える
負債は大きく膨らみました。

米国経済の3分の2を占めるのが個人消費です。
最も重要なセクターです。

しかし、米国の個人は過剰負債で、消費を増やそうとしても、
消費に回すお金がなくなってしまいました。
そのため、消費抑制の結果、米国経済は大きく減速しました。

世界消費の25〜30%を消費していた米国の個人消費が、
突然なくなったため、リーマン・ショックで世界経済は、
大不況に陥ってしまいました。

住宅ローンやカード・ローン等、個人に融資した
金融機関も大きな傷を負いました。

金融は、経済の血液ですから、経済活動が瞬時に麻痺し、
金融面でも世界経済は大きく減速しました。

その上、取引事例が少ない商業用不動産の損失処理は、
米国金融機関ではあまり進んでいないと言うのが実情です。

製造業や企業は、雇用と在庫を大きく減らしました。
その結果、未曾有の大不況に陥りました。


3)不況対策

大不況が大統領選挙の時期と重なったため、
ブッシュ前大統領からオバマ大統領へ政権移行で、
また、別の見方をすると、共和党から民主党への移行で、
経済政策の対応の遅れが目立ちました。

オバマ政権発足後は、財政赤字を大きく拡大させ、
景気対策を打ちましたが、効果はあまり出ていません。

そのため、金融政策に大きな比重がかかることになりました。

FRBの打ち出した金融緩和=量的緩和が、
相場を大きく上昇させたとも言えます。

添付の qe2101012 を参照して下さい。
上段がS&P500指数で、下段が米国10年債の利回りです。

プログラム開始当初は、効果が出ませんでしたが、
昨年3月以降、プログラムを拡大して以降は、
金利上昇と歩調を合わせて株価は上昇し、
米国経済は大恐慌の淵から生還したと言えます。

FRBの住宅ローン担保債券や国債の買入れで、
市中に流れる資金量を増加させました。
いわゆる流動性相場の演出です。

米国では、株式相場が上昇すると、資産効果が発揮され、
個人の懐具合が好転して、景気が上向きになりやすいです。

また、ドル余剰から発生するドル安で、米国製造業の
コスト面での相対的な力が向上し、輸出が伸びました。
つまり、交易条件が改善しました。
ドル安は不況対策として機能しました。


4)景気回復

リーマン・ショック以降、極端に大きく減らした在庫を、
企業や流通や小売段階で、ある一定のレベルにまで
回復させたのが、昨年春からの景気回復過程でした。

先日、全米経済研究所が昨年6月で不況が
終了したと公式に発表しています。

しかし、不況が終了して1年以上経過しますが、
減りすぎた在庫を適正水準に回復させてからは、
さらに強気に在庫を増やす企業は少ないようです。

今年春以降の、景気と株価のもたつきはこれと符合します。


5)現状認識

景気はかなり回復し、既に不況ではなくなりました。
しかし、今回の大不況の原因である住宅価格は、
上昇していません。

個人は時間をかけて、負債を減らしつつあります。
そのため、貯蓄率が上昇しています。

負債を減らすことも、消費することも、全て所得が
源泉になることは当然です。
所得の源泉は雇用です。
ところが、その雇用は増加していません。

製造業や企業が雇用を積極的に増やす様子は
あまりなさそうに見えます。

金融機関はかなり体力が回復しました。
米国民の税金で救済されたにもかかわらず、
高額のボーナスも復活させ、批判を浴びるようになりました。

ウォール・ストリートはメイン・ストリートの犠牲の上に
成り立っていると指摘する人は多いです。

しかし、新金融規制の影響は今後出てくると思います。
今後、米国の金融機関が暴利を貪ることは、
かなり難しくなると考えられます。


6)重要指標の変化の兆し

米国では、数々の経済指標が毎日発表されますが、
現在のそして将来のマクロ経済の方向を、
端的に示す指標が、「物価」になり始めたようです。

米国が、直ぐに日本型のデフレに陥るかどうか
分かりませんが、物価上昇していないことは事実です。

物価は需要と供給で決まります。
物価が上がらないことは、「需要<供給」の状態で、
需要サイドが、以前よりも小さくなったからか、
供給力がついて、需要を凌駕したからかです

そもそも、米国は国内製造業が空洞化して、
生活必需品まで輸入せざるを得ない国ですから、
供給力は需要に比べて長期間不足しているはずです。

つまり、米国の経済構造は、輸入を考えなければ、
「需要>供給」の状態で、物価が上昇し易いと言えます。

ドル余剰に伴うドル安で、輸入物価が上昇し易い
状態ですが、リーマン・ショック以降は、世界の
需要が減退して、国際商品価格は一旦下落しました。

しかし、新興国の経済回復が早く、また、世界的な
異常気象やドル安や先進国の金融緩和の影響で、
このところ国際商品価格は上昇気味です。

現状米国の輸入物価の絶対水準は落着いています。
リーマン・ショック直後の輸入物価は急落しましたが、
その時点から比較すると、輸入物価は持直しています。

それでも、「需要<供給(輸入を含む)」状態なのですから、
米国経済の抱える問題の根はかなり深いと言えます。

FRBが現状打破できる手段は、量的緩和しかないと
考えているのも頷けます。


7)追加量的緩和の狙い

バーナンキFRB議長は2000年以降の、
日本のデフレを批判して、「ヘリコプターで空から
紙幣をばら撒けば、デフレは収まる」と発言して、
「ヘリコプター・ベン」と呼ばれていました。

FRBはジャブジャブの流動性を考えているのです。

通常は、通貨供給量が増加すると、物価が上がります。
つまり、モノの価値は変わらずに、お金の価値が減ります。
これがインフレです。

通常は、ドル余剰になりドル安になります。
ドル安になれば、輸入物価が上がってインフレになります。

通常は、中央銀行が大量の国債を市場から購入したり、
引き受けたりすると、瞬間的に金利は低下しますが、
将来のインフレを織り込み始め、金利は上昇に転じます。

FRBの最終目的は、住宅価格の下落を止め、
緩やかに上昇させることです。
今回の大不況の原因を絶つことです。

そのための、市場の期待インフレ率を上昇させることです。
FRBは、より長めの金利を上昇させたいのだと思います。
表面的に、イールド・カーブの傾きを急角度にしたいのです。

量的緩和をさらに進めて、物価が下落しない環境を
作りたいのだと思います。

物価下落を防ぐための量的緩和です。
整合性があると考えられます。

そして、物価が下がらなければ、住宅価格の下落が防げ、
インフレになれば、住宅価格が上昇すると考えているのです。

FRBは、スタグフレーションよりは、デフレのリスクの方が
大きいと考えているのです。

FRBの量的緩和が来月実施されることを前提に、
今後注目される経済指標の重心は、
物価に移りつつあると考えます。

当然、住宅価格の動向も重要です。


2010年10月12日 13:00記述


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